vol.66 「限りない欲望と、根拠の無い恐怖心を数値に入れていなかった結果だろう。」

【岡崎】
2月に入って少し暖かくなったかな? ゴルフに行きたくてうずうずしてた人には、ちょっとした朗報だね。

【大月】
私はスキーをやるので、特に冬冷え込む地域でない上に暖かいとなると、雪質も悪く、残念ですね(笑)。

【岡崎】
しかし…、混沌とした世情…。相変わらず政治家は権力闘争。何考えてるんだろうか。
岡山地域も倉敷を中心に大変。総社地区なんて失業者で困ってる。仕事が無いんだよね。製造業は無茶苦茶。このまま不況が続くと、一体どうなるんだろうか。最初は他人事だと思っていた人にも、じわっとボディブローのように効いてきてる。この泥沼からいつ脱出できるのだろうか。

【大月】
総社地区は、自動車産業で成り立ってます。自動車業界がこれだけ不況だと、街自体の活気がなくなってきますよね。地元の同級生がその総社で自動車メーカーのディーラーに勤務していますが、相当厳しいのではないでしょうか。

例えば、サービス業とか。業種が違うから関係ないと思っていた人が多いでしょうけど、「買ってくれない」「食べに来てくれない」等々、徐々に不況というものを実感してきているでしょうね。経済が実際のところ、どのように成り立っているか。

ところで、社長。こういう世情なので致し方ないところではありますが、一応、ゴルフ情報の雑誌なので(笑)、1つくらいゴルフネタをお願いできませんか?

【岡崎】
ん?…(笑)。ゴルフ情報の雑誌だから、本来ゴルフについてのコラムだということはわかってるんだけどね。しかし、この社会情勢を考えるとゴルフのことなんて書けなくない? ゴルフが大好きだけど、ゴルフをする気分になれないって人が多い。"こんなときだからゴルフでもやってこの暗い雰囲気を変えよう" とは思うけれど。

100年に一度の危機。

そんなに生きていないので実感も湧かない。だけど、大変というより異常な感じ。財務大臣が酔っ払って記者会見するぐらいだからね。

【大月】
世界的な大不況なので、各国の首相なり財務大臣なりが集まり、ナンダカンダと議論するのはわからなくはないです。国会においても、ナンダカンダと議論するのもわからなくはない。ただ、先の総社地区の例を挙げるとすれば、職を失って路頭に迷っている多くの失業者達が存在することと、各国の首脳や大臣が集まったり、国会議員が議論したりすることが、リンクしているとは到底考えられないんですよ。

「どうやら下界は不況らしい。」

そんなレベルでしか考えられていないような人間達が、議論したところで問題は解決しない。国が12,000円バラまいて預金されてしまうよりも、市が某自動車メーカーの自動車を購入するための資金として、10万円の購入資金をバラまいたことの方が意味があると思いますね。

そういった具体的な施策で内需拡大を図る。そして、実質的に経済を支えている中小企業の経営改善に努めて欲しいものです。

【岡崎】
確かに。地方経済はほとんどが中小企業が支えている。そんな中、大企業が資金繰りに奔走している。中小企業に資金などまわるはずも無く壊滅状態。中小製造業なんてもともと大企業頼り。コスト削減がテーマ。生き延びるために、切り詰めて受注してきた。粗利なんて非常に少ない。それなのに発注は止まり、銀行の融資は止まる。持つはずが無い。

自民党も、民主党も、本当に実態がわかっているのだろうかね? 銀行には毎日のように、上場企業からの融資申し込みが殺到する。市場で思うような資金調達ができなくなった企業は銀行頼み。昨日まで「借りてください」と、お願いしていた銀行はノーと言えない。何千億単位でキャッシュが出て行く。当然、中小企業になんてお金は回るはずもない。

立派な経済学者なんて人たちが、机上の論理だけで、分かったようなことを言う。つい最近まで絶賛していた、自由な金融システムは何をもたらしたと思う? いかに数字上の理論が素晴らしくても、結局は運用するのは人間なんだよね。

限りない欲望と、根拠の無い恐怖心を数値に入れていなかった結果だろう。もっとシンプルに考えられないんだろうか? 経済学って、そんなに難しいものなのだろうか? 生活に必要以上の利益をもたらすことを求めなければ、もっと簡単に思えるけどねえ。

金融機関は人間で言うと心臓みたいなもの。血液が足りない状況ではどんな治療を施しても健康にはならない。多少の弊害があっても、どんどん緊急輸血をしなければならないね。

【大月】
「緊急輸血」と言えば、最近「経営者の皆さん、ご存知ですか? セーフティネットの緊急保証枠が拡大されました。」なんてTVCMが流れていますが、そもそもこの施策って、どうなんでしょう?

【岡崎】
セーフティネットなる緊急保証制度なんて、あまり意味が無いと思うね。地方の保証協会へ、この緊急金融対策を責任転嫁しているようなものでしょ。それは海で遭難している人たちを、陸上自衛隊が救出に向かっているようなもの。保証協会の職員は、休日返上で仕事する。保証協会という船のまわりに、おぼれかけている人が殺到している。救難に向かった船が沈没しそう。もう誰を助けたらいいかわからない。もうすでに救難の役割や意味も分からなくなってきている。

そこで、まず人脈のある人から助けよう。普段交友のある地元の銀行の案件から。さらに上司と交友のある企業から。銀行の支店長は部下に号令をかける。

「何とか保証協会の保証を取り付け、プロパー資金の回収をするんだ。通常案件はすべて断れ。協会つきの融資を最優先しろ。」

と。当然そうなる。結局、中小企業救済目的の施策も、利益優先の社会では役に立たない。ここでも机上の論理だけで、税金が無駄に費やされるわけ。

【大月】
「プロパー回収」となると…。折角の税金を使った施策も、単に借入の返済に充てられてしまうだけですよね。

【岡崎】
そう。経済産業局に提案したい。緊急保証の予算があるなら、もう少し運用を具体的に指示するべき。保証協会に任せず、本来融資のプロフェッショナルである民間商業銀行に、業務を委ねてはどうだろうか?

例えば、8000万円の緊急融資を受けるためには、本来の銀行プロパーの設備資金を期限を決めて、リスケジュールしておいて実行するとか。もちろん再生計画を精査してのことだけどね。ほとんどの銀行員は、取引先には頻繁に訪問しているはず。そこの企業の人となりは、少なくとも保証協会の職員よりは理解しているはず。結果プロパー資金の回収に使われることも無く、銀行の実績にもなる。さらに第三者の介入を防ぐことにもなる。そしてホントに企業を助けることにもなる。

頭のいい支店長は、弱い立場の中小企業経営者に甘い誘いをかけるわけ。

「社長、協会で8000万借りれますから、去年当行が貸し出ししている5000万を返してしまいましょうや。なら残りの3000万は運転資金で使えますよ。」

なんて。
「プロパー資金さえ回収してしまえば、そこの企業が倒産しようが、破産しようが関係ありません。私の責任ではありませんから。あとは税金で補填してもらえます(笑)。」
その話に、今助かりたい経営者は乗るんですな。

しかし、その支店長が悪いわけではないんだよ。現行の金融システムでは、民間商業銀行としての当たり前の行動。自由化のツケと言うか。確かに金融の自由化は多くの利点も生んだ。しかし公的資金35兆円も使って救済した民間企業、銀行。そのトップが

「我々は商業銀行であり株主優先である。」

と、堂々と公の場で発言し、利益最優先であると社内で指示するのはどうかと思わない?

【大月】
前回、話題に上った件ですね。
リスケジュールとか再生計画の練り直しだとか、それらを前提条件とし精査した上で緊急保証枠を適用する。12,000円の件もそうですが、やはり、運用を具体的に指示しなければ、金融機関が果たすべき社会的責任というものを無視し、利益に傾倒する「民間商業銀行」のエサになりかねない。折角の施策も役に立ちません。

【岡崎】
何兆円も国家予算組んで保証枠広げるなら、その予算を思い切って銀行に渡してあげて、優秀な銀行員に任せてみるべきだね。その方が有効に税金を使えると思うけどな。政治家や金融庁の官僚のみなさんは、実態を知っているのだろうか?

最近、保証協会へ入った若い人は優秀な人が多い。しかし一方で、何年も協会にいてふんぞり返っている人たちも結構いる。保証業務も利権になっているわけ。一部の人たちには。自分の財布ではなく、所詮税金だから。焦げ付きが出ても関係ない。給与も退職金も、年金も守られている。

これだけ融資案件が殺到すると、彼らが企業の生殺与奪権をもっているわけなんだな。本来の業務の内容でもなく、人脈やイメージが決済に影響する。申し込みしたときの担当者の資質によって、結果は180度変わってしまう。

例えば、ゴルフ業界の経営者が申し込みをする。担当者がゴルフをしない。もう最悪ですな。あっさり窓口で言う。

「私はゴルフをせんからわからん。これからぼちぼち勉強しますわ。」

などと平気で言う。

緊急を要する案件でも進まない。人脈さえあればすぐ進む。同じ時間、同じ日にちに申し込みをしても、結論が早い。真面目にやっている職員の人が大半だけど。しかし、そういう人たちがいるのも事実。まあ、真面目にやっている人は、実はみんな気づいているんでしょうけど。

【大月】
言うなれば、「お役所」なわけですね…。利権塗れ。
「我々は商業銀行であり株主優先である。」なんて堂々と発言する民間金融機関というようなものがある一方で、公的金融機関の本来果たすべき役割というものは、何なんでしょうね?

【岡崎】
本来、公的金融機関の目的は、まずは雇用の拡大。そのための経済活性。お金を貸すだけではダメ。その資金がどのように使われ、どういう役割を果たすかが重要なはず。特にこのような "100年に一度の危機" と言われる経済危機における役割は重要になる。 政府がどんなに緊急対策をしても有効に活用されなければ意味がない。

民間銀行は、こんな時代には資金の回収を急ぐ。だから、破綻しなくてもいい企業までもが破綻に追いやられる。不動産業界なんて正にそう。回収を急いだ金融機関に潰されたようなもの。銀行は金融庁がいくら指導してもリスケジュールは嫌がる。そこに持ってきて中小企業対策として緊急保証枠を増やす。正に資金回収のエサになる。そんなことは分かっているはずだし、銀行を責めるわけにもいかない。だとすれば、この資金を本当に有効に利用してこの危機を乗り切らなければならない。 金融庁は徹底してこの資金の行方を調査するべきではないだろうか。大半が銀行の返済資金に使われているはず。

しかし、今は誰かの責任を追及するべきときではなく、政・官・民が一体となって雇用の確保をするための生きた経済政策をとるべきではないかな。

【岡崎】
なんて今月も偉そうなことを言いました。しかし、この無力感は何なんだろうかねえ。せっかくのゴルフシーズン到来なんだけど。

うーん、こうなったら、中川さんにならって酩酊ゴルフでもやりますか。冗談、冗談。危険だよ。ゴルフのプレー中は、アルコールの摂取をなるべく避けましょう。でも、ハーフの後のビールは、最高なんだよなあ(笑)。

『健伍録』は、ゴルフ情報フリーマガジン『GJ』にて好評連載中の『スーパー親父のひとりごと』がスピンオフしたウェブコンテンツです。